しとしとと雨がつづく六月。じめじめした梅雨(つゆ)の時期も、じつは旬(しゅん=いちばんおいしい時期)の味覚(みかく)がたくさんあります。川の女王とも呼ばれる鮎(あゆ)の塩焼き、夏の入り口に食べる蛸(たこ)、そして初夏の手仕事「梅仕事(うめしごと)」——この記事では、雨の季節ならではの食の楽しみを、わかりやすくご紹介します。
さきに結論を言うと、鮎の旬は6月〜8月。塩焼きが絶品で、さらにこの時期には「半夏生(はんげしょう)に蛸を食べる」という風習(ふうしゅう)や、梅(うめ)を漬ける「梅仕事」など、初夏ならではの食の行事(ぎょうじ)が重なります。
鮎(あゆ)の塩焼きがおいしい季節
鮎は、清流(せいりゅう=きれいな川)にすむ魚で、旬は6月から8月。多くの川で6月ごろに鮎釣り(あゆつり)が解禁(かいきん=つってよいことになること)され、初夏の風物詩(ふうぶつし)となっています。
鮎の魅力は、なんといってもその香り。すいかやきゅうりのような、すがすがしい香りがすることから「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれます。若い鮎は骨(ほね)までやわらかく、内臓(ないぞう=わた)のほろ苦さもごちそうのうちです。
いちばんのおすすめは、シンプルな塩焼き。串(くし)を打って、ひれに多めの塩(化粧塩=けしょうじお)をつけ、じっくり焼き上げます。皮はパリッと、身はふっくら。頭からかぶりつけば、ほろ苦いわたと香ばしい身が口いっぱいに広がります。
半夏生(はんげしょう)に蛸(たこ)を食べる理由
「半夏生(はんげしょう)」とは、夏至(げし)から数えて11日目ごろ、7月初旬にあたる暦(こよみ)の節目(ふしめ)のこと。田植え(たうえ)を終える目安の時期とされてきました。
この半夏生に、関西地方などでは蛸(たこ)を食べる風習があります。これは、蛸の八本(はっぽん)の足のように「稲(いね)の根がしっかり張りますように」という、農家(のうか)の願いがこめられたものです。ちょうど蛸が旬をむかえる時期でもあり、理にかなった食の知恵(ちえ)といえます。ゆで蛸や酢の物(すのもの)、たこ飯(めし)など、食べ方もいろいろです。
初夏の手仕事「梅仕事(うめしごと)」
六月は、青い梅(うめ)が出回る季節。この梅を使って、梅干し(うめぼし)や梅酒(うめしゅ)、梅シロップを作る昔ながらの手仕事を「梅仕事」と呼びます。
とくに梅シロップは、青梅(あおうめ)と氷砂糖(こおりざとう)を交互(こうご)に入れて漬けるだけと手軽で、初心者にもおすすめ。数週間でできあがり、水や炭酸で割れば、さわやかな一杯になります。じめじめした季節も、さっぱりとした梅の酸味(さんみ)が食欲を助けてくれます。(※梅の下ごしらえや保存は農林水産省のサイトも参考になります)
梅雨どきの一杯に
香ばしい鮎の塩焼きには、すっきりとした冷酒(れいしゅ=冷やした日本酒)がよく合います。わたのほろ苦さと、日本酒のうまみは相性抜群です。ゆで蛸や酢の物のようなさっぱりした肴(さかな)には、レモンをしぼったサワーや生ビールもぴったりです。
お酒を飲まない方には、手作りの梅シロップの炭酸割りを。梅のさわやかな酸味が、じめじめした季節にうれしい一杯になります。
よくある質問(FAQ)
鮎(あゆ)はなぜ「香魚(こうぎょ)」と呼ばれるの?
鮎は、すいかやきゅうりのようなさわやかな香りがすることから「香魚」と呼ばれます。この香りは、鮎が川底のこけ(藻)を食べて育つことに由来(ゆらい)します。新鮮な鮎ほど、香りが豊かです。
半夏生(はんげしょう)に蛸(たこ)を食べるのはなぜ?
蛸の八本足のように「稲の根がしっかり張りますように」という農家の願いがこめられた、関西などの風習です。ちょうど蛸が旬をむかえる時期でもあり、栄養をつける意味でも理にかなっています。
梅シロップは初心者でも作れますか?
作れます。青梅と氷砂糖を清潔(せいけつ)なびんに交互に入れて漬けるだけで、火を使わずにできます。数週間でシロップができあがり、水や炭酸で割ればさわやかなドリンクになります。梅仕事の入門にぴったりです。
雨の夜は、旬の味でしっとりと
窓の外の雨音を聞きながら、香ばしい鮎の塩焼きに冷酒を一杯。ゆで蛸をつまみに、手作りの梅シロップで乾杯——じめじめした六月も、旬の味覚と少しの手仕事があれば、心地よい季節に変わります。雨の夜こそ、ゆっくりと食を楽しんでみてはいかがでしょうか。