桜が咲き、新しい生活が始まる四月。お花見のシートに並ぶごちそうにも、春から初夏へと移りゆく季節の味が顔をのぞかせます。さわやかな初鰹(はつがつお)のたたき、掘りたての筍(たけのこ)の煮物——どちらも「今しか食べられない」旬(しゅん=いちばんおいしい時期)の味わいです。この記事では、初鰹のおいしさや筍のあく抜き、そして“はしり”という言葉の意味まで、わかりやすくご紹介します。
さきに結論を言うと、初鰹の旬は4月〜5月ごろ。その年に初めてとれる、さっぱりとした鰹(かつお)のことで、掘りたての筍とともに、春の“はしり”を代表するごちそうです。
“はしり”ってどんな意味?
食べものの旬には、じつは三つの呼び方があります。出はじめの「はしり」、いちばんおいしい最盛期(さいせいき)の「盛り(さかり)」、そして季節の終わりの「名残(なごり)」です。
なかでも「はしり」は、その季節にいちばん早くとれる、初物(はつもの)のこと。昔から「初物を食べると寿命(じゅみょう)が延びる」と言われるほど縁起(えんぎ)がよく、江戸(えど)の人々は初鰹に大金を出してでも食べたがったといいます。四月は、まさにこの“はしり”の味を楽しめる季節なのです。
初鰹(はつがつお)のたたきがおいしい理由
初鰹とは、春から初夏にかけて、北へ向かって泳いでくる、その年に初めてとれる鰹のこと。秋にとれる「戻り鰹(もどりがつお)」が脂たっぷりなのに対して、初鰹はさっぱりとして身がしまっているのが特徴です。
この初鰹をいちばんおいしく食べる方法が「たたき」。表面をわらや強火であぶり、中は生のまま。香ばしい皮としっとりした身の対比(たいひ)が絶品です。にんにくや生姜(しょうが)、みょうが、青ねぎといった薬味(やくみ)をたっぷりのせ、ポン酢でさっぱりいただくのが定番です。あぶることで、青魚(あおざかな)特有の香りがやわらぎ、うまみが引き立ちます。
筍(たけのこ)のあく抜きのコツ
春のもう一つの主役が、掘りたての筍(たけのこ)。とれたては生でも食べられるほどですが、時間がたつとえぐみ(あく)が強くなるため、手に入れたらできるだけ早くゆでるのがおいしさのひけつです。
あく抜きは、米ぬか(こめぬか)と赤とうがらしを入れたお湯で、皮つきのままゆっくりゆでるのが基本。米ぬかがなければ、米のとぎ汁(しる)でも代用できます。竹ぐしがすっと通るまでゆでたら、そのまま冷まして完成。あく抜きした筍は、若竹煮(わかたけに=わかめと煮たもの)や土佐煮(とさに)、焼き筍、天ぷらなど、いろいろな料理で楽しめます。(※筍の下ごしらえは農林水産省のサイトも参考になります)
花見の席に合う一杯
さっぱりした初鰹のたたきには、冷やした辛口の日本酒や、すっきりした生ビールがよく合います。薬味のきいた鰹のうまみを、きりっと引きしめてくれます。筍の煮物のようなやさしい味には、ぬる燗(かん)の日本酒がぴったりです。
お酒を飲まない方には、ノンアルコールビールや、緑茶のソーダ割りなどもさわやか。桜の下で味わえば、旬のごちそうがいっそう引き立ちます。
よくある質問(FAQ)
初鰹(はつがつお)と戻り鰹(もどりがつお)のちがいは?
初鰹は春から初夏にとれる、その年最初の鰹で、さっぱりして身がしまっています。戻り鰹は秋にとれるもので、脂がたっぷりのって濃厚(のうこう)な味わいです。同じ鰹でも、季節によって味わいが大きく変わります。
筍(たけのこ)のあく抜きに米ぬかがないときは?
米のとぎ汁で代用できます。皮つきのまま、赤とうがらしといっしょにゆっくりゆで、竹ぐしがすっと通ったら火を止めて、そのまま冷ましてください。とにかく手に入れたら早くゆでるのが、えぐみを抑えるいちばんのコツです。
“はしり”と“旬”はどうちがうの?
「はしり」は季節の出はじめの初物(はつもの)、「盛り(さかり)」がいちばんおいしい最盛期、「名残(なごり)」が季節の終わりを指します。旬はこれらをふくむ「いちばんおいしい時期」全体のことです。
桜の下で、春のはしりを味わう
満開の桜を見上げながら、さっぱりした初鰹のたたきに一杯。掘りたての筍の香りに、春の深まりを感じる——四月は、季節の“はしり”をいちばんぜいたくに楽しめる時期です。新しい季節の始まりに、旬の味とあたたかい一杯で、乾杯してみてはいかがでしょうか。